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個人事業の場合、退職金を事業主に支払うという考え方は認められていません。退職金を事業主に支払うという概念自体がないわけです。
また、家族専従者への退職金も経費として認められていません。
個人事業主はほとんどの人が国民年金のみに加入しています。現在、国民年金の保険料を満額支払っても年額80万円程度の年金しか受け取れません。
しかし、法人成りすれば会社から社長本人や家族従業員に退職金を支払うことが出来ます。その額が適正な金額であれば、会社の経費として認められます。
さらに、退職金を受けとる側の個人についても、税金面でおとくになります。
退職金は退職所得として課税されます。しかし、退職金は老後の生活保障的な性格から課税においては、非常に優遇されています。
退職金にかかる税金の計算を簡単に説明しましょう。
退職金には、その収入から退職所得控除という特別な控除が認められています。
まず、退職所得控除は、退職金収入が80万円未満の場合全額控除できます。税金はかからないということです。
勤続年数が20年以下の場合、40万円に勤続年数を掛けた金額を退職金から差し引きます。そして残った金額の1/2に所得税率を掛けて税額を算出します。
勤続年数が20年を超える場合、超えた年数に70万円を掛けて、20年×40万円を加えた額が控除額。控除後の額の1/2に所得税率を掛けて税額を算出します。
勤続年数 | 控除額の計算式 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円以下は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職所得=(退職金ー退職所得控除額)×1/2 |
例をあげて説明しますと、
■勤続20年で退職 退職金1,000万円の場合
退職所得控除額 40万円×20年=800万円
退職所得=(1,000万円ー800万円)×1/2=100万円
退職所得100万円に対する所得税率5%で 所得税5万円
■会社から1,000万円を給与として支給された場合
給与収入に対して、給与所得控除は、1,000万円×5% + 170万円 = 220万円
1,000万円ー220万円ー38万円(所得控除) = 742万円(これが、所得税が課税される前の課税所得)
742万円×23%(所得税率) = 1,093,000円 所得税は約109万円
■個人事業主の経費を引き去った利益(儲け)の場合
青色申告を前提として、
1,000万円ー65万円(青色申告特別控除)ー38万円(所得控除) = 8,970,000円(課税所得)
897万円×23%(所得税率) = 1,457,000円 所得税は、約146万円
いかがでしょうか?これは、法人成りの大きなメリットといえます。
なお、勤続年数が5年以下の役員等については、1/2の優遇措置は適用されませんので注意が必要です。
会社を設立した当初は、まず事業を軌道に乗せて利益が出せる状態に持っていくことや、規模を拡大して成長させていくことで精一杯で、退職金どころではないと思います。
しかし、順調に利益が増えてくれば同時進行で節税対策も考えて行かなければなりません。
社長さんや家族役員、家族従業員にとって、毎月の給与を少し削ってでも、その分を退職金の原資に回した方が大きな節税になると同時に、引退後の生活の安定に寄与するものとなります。
とはいえ、退職金を支払うためには財源作りをどうするか?
現金を積み立てておけばいいじゃないか、と言われそうですがそう上手くは行きません。
会社として現金を積み立てるということは、その積立金は経費化されていないことになりますので、単に利益を留保しているだけ、ということになります。つまり、法人税が課税されてしまうことを意味します。法人税法上、損金として認めてもらえません。
そこで、退職金の財源として各種生命保険や国が運営する経営セーフティ共済を利用し、社外にお金を積み立てるようにします。そうすることによって、掛け金の全部または一部を損金にすることが出来ます。
生命保険にしろ経営セーフティ共済にしろ、満期のあるものや満額になるものもあります。一つの商品だけでなく二つ以上組み合わせる方法もあります。事前に商品内容をよく検討しておき社長さんや家族従業員の退職時期を計画しておきます。
生命保険等は解約し保険金を会社が受け取ると、その収入は雑収入という扱いになります。そのままですと、単に会社の利益が増えただけになってしまい法人税が課税されてしまいます。
そこで、退職時期と解約の時期を計画通り合わせておきます。一方で解約により会社に雑収入(益金)が入りますが、退職金を支給する(損金)ことによって相殺し、節税することができるわけです。
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